建物の敷地と専用通路を借りている借地権、
どこまでが評価対象か

― 評価単位・私道減額の要否・借地権の及ぶ範囲 ―

この記事の位置づけ
道路から細長い通路を通って奥の建物に至る、いわゆる旗竿地の借地。建物の敷地だけでなく、道路に出るための通路部分もあわせて借りている、という形は珍しくありません。この場合、通路部分を私道として減額するのか、建物の敷地と一体で評価するのか、そもそも通路部分に借地権が及ぶのか、という論点が生じます。本記事は、その判定の考え方を一般論として整理したものです。特定の個別案件を述べるものではなく、数値もすべて説明用の仮設例です。

1. 想定する土地の形

A土地(建物の敷地) 建物が建っている部分 B土地 (通路) 公 道 他人の土地 他人の土地 他人の土地 他人の土地
A土地(建物の敷地)とB土地(公道に出るための通路)を、借地人が借りて一体で使っている形

借地人は、他人名義のA土地の上に自分の建物を建てて住んでおり、公道に出るにはB土地(通路)を通るほかありません。地代を払っており、権利金の授受はありません。この状態で相続が発生したとき、借地権をどう評価するかが問題になります。

説明用の仮設例として、以下の数値を置きます。(実在の案件の数値ではありません)

項目仮設例の数値
A土地(建物の敷地)200平方メートル
B土地(通路)50平方メートル(幅4メートル前後)
合計250平方メートル
地区区分普通住宅地区
借地権割合60パーセント
権利金授受なし

2. 論点は3つに分かれる

  1. 評価単位
    A土地とB土地を合わせて1画地とするのか、別々に評価するのか。
  2. 私道としての減額
    B土地は通路なのだから、私道として30パーセント評価(あるいはゼロ評価)にすべきではないか。
  3. 借地権の及ぶ範囲
    B土地には建物が建っていない。それでも借地権が及ぶのか。

この3つは似て見えますが、まったく別の問題です。とくに3番目は、1番目・2番目の前提となる論点であり、実務上もっとも見落とされやすいところです。

3. 評価単位は「1画地」になる

宅地は1画地の宅地(利用の単位となっている1区画の宅地)を評価単位とし、土地の上に存する権利についても同様とされています(財産評価基本通達7-2本文および同(1))。

ここで押さえるべきは、評価単位は登記上の筆とは無関係だという点です。同通達7-2の(注)1は次のように述べています。

「1画地の宅地」は、必ずしも1筆の宅地からなるとは限らず、2筆以上の宅地からなる場合もあり、1筆の宅地が2画地以上の宅地として利用されている場合もあることに留意する。 財産評価基本通達7-2(1)の(注)1

したがって、A土地とB土地が2筆であること自体は、1画地とすることの障害になりません。

地主が別人でも結論は変わらない

A土地とB土地の地主が別々の人である場合はどうか。この点には正面からの回答があります。

2以上の者から隣接している土地を借りてこれを一体として利用している場合の借地権の価額は、借地権の目的となっているA土地及びB土地を合わせて1画地の宅地として評価します。なお、乙及び丙の貸宅地を評価する場合には、それぞれの所有する土地ごとに1画地の宅地として評価します。 国税庁質疑応答事例「宅地の評価単位-借地権」(関係法令通達・財産評価基本通達7-2)
借地権側と貸宅地側で評価単位がねじれる
借地権側は借地人の利用の単位で1画地とし、貸宅地側は所有者ごとに1画地とします。同じ土地でも、借地人側では1画地、地主側では2画地になるという非対称が生じますが、これは矛盾ではありません。借地権の評価は借地人が現に持つ利用権の価値を測るもの、貸宅地の評価は地主の使用収益がどの範囲で誰の権利により制約されているかを測るもので、見る方向が違うためです。

裁決も同じ方向を示している

国税不服審判所の裁決に、参考になるものがあります。被相続人が所有する宅地に加えて、2名の別々の地主から借り受けた土地を合わせて共同住宅の敷地として一体利用していた事案です。

自己が所有する宅地に隣接する宅地を借りている場合において、当該隣接する宅地を借りる権利が専属的に利用できる権利である場合で、当該所有する宅地と当該借地を併せて全体が一体として利用されているときには、その全体を1画地の宅地として評価することが相当。 国税不服審判所 平成26年4月22日裁決(裁決事例集No.95)

注目すべきは、この事案では相当の地代が支払われていたため借地権の価額そのものは零と評価されるものであった、という点です。それでもなお「借地借家法上の借地権である以上、使用借権とは同視できない」として、評価単位としては一体としました。権利の価額がゼロでも評価単位は一体になる、という射程の広い判断です。

ただし、使用貸借なら話が逆になる
別の裁決(平成28年12月20日裁決・裁決事例集No.105)は、使用貸借により隣接地を借りて一体利用している場合には、所有する宅地のみを1画地として評価するとしています。
つまり「賃貸借か使用貸借か」が評価単位を分ける境界線です。賃貸借なら評価単位に含め、使用貸借なら外す。B土地について地代を払っているかどうかが、ここで効いてきます。

4. 専用通路は「私道」ではない

B土地は通路なのだから私道として30パーセント評価すべきではないか、という発想は自然です。しかし、これには正面からの回答があります。

【照会要旨】専用利用している路地状敷地についてはどのように評価するのでしょうか。

【回答要旨】次の図のAの部分のように、宅地Bへの通路として専用利用している路地状敷地については、私道として評価することはせず、隣接する宅地Bとともに1画地の宅地として評価します。 国税庁質疑応答事例「私道の用に供されている宅地の評価」(関係法令通達・財産評価基本通達24)

この事例に添付されている図は、道路から伸びる細長い通路と奥の宅地という、まさに旗竿地です。

なぜ私道にならないのか

財産評価基本通達24は次のように定めています。

私道の用に供されている宅地の価額  = 11から21-2までの定めにより計算した価額 × 100分の30  ※ その私道が不特定多数の者の通行の用に供されているときは、評価しない

ここで大事なのは、なぜ30パーセントまで下がるのかという理由です。同通達が対象とする私道は、他者の通行に供されることによって、所有者や利用者の自由な使用収益が制約されている土地を指すと解されます。制約があるからこそ減価されるわけです。

これに対し、自分の宅地に出入りするためだけの専用通路は、他者の通行に供されておらず、使用収益に何の制約もありません。機能的には自分の敷地の一部そのものです。だからそもそも「私道」に当たらず、宅地と一体で評価する、という整理になります。

通路の状態評価
自分の宅地への専用通路(他者は通らない)私道評価せず、宅地と一体で1画地
特定の者の通行の用に供する私道(行き止まり等)自用地価額の100分の30
不特定多数の者の通行の用に供する私道(通り抜け等)評価しない(ゼロ)
現地確認が要る
通路の周囲に他人の土地が隣接している場合、その所有者や借地人が通路を通行していないかの確認が要ります。他者も通行していれば「専用通路」ではなくなり、通達24の適用場面に変わって結論が大きく動きます。図面上は専用通路に見えても、現地では隣家が日常的に通っている、というのは実際にあり得ます。

5. 「減額していない」わけではない

ここは誤解されやすいところ
「通路も含めて全体を評価する」=「通路を減額しない」ではありません。通路部分を含めることでかげ地割合が大きくなり、不整形地補正が強く効くためです。減額は、私道評価としてではなく不整形地補正という形で入っています

仮設例(A土地200平方メートル+B土地50平方メートル=250平方メートル、普通住宅地区)で考えます。旗竿地は想定整形地に対して評価対象地が小さくなるため、かげ地割合が大きく出ます。

かげ地割合 =(想定整形地の地積 - 不整形地の地積)÷ 想定整形地の地積

かげ地割合が65パーセント以上になると、普通住宅地区・地積区分A(500平方メートル未満)の不整形地補正率は0.60です。これは付表5の表全体の最小値でもあります。

補正率表は「65パーセント以上」で打ち止め
かげ地割合が65パーセントでも80パーセントでも、補正率は同じ0.60です。旗竿地は竿が細長いほどかげ地割合が跳ね上がりますが、ある水準から先は補正率が動きません。したがって、かげ地割合の数値が多少ぶれても結論が変わらないケースが多くあります。

間口距離は「竿の幅」を取る

旗竿地の間口距離をどこで測るかは、実務上の分かれ目です。奥の敷地の幅ではなく、通路(竿)の幅を取ります。

間口距離は、原則として道路と接する部分の距離によります。 国税庁質疑応答事例「間口距離の求め方」(関係法令通達・財産評価基本通達20-4)

奥行距離の取り方にも定めがあります。

奥行距離が一様でないものは平均的な奥行距離によります。具体的には、不整形地にかかる想定整形地の奥行距離を限度として、その不整形地の面積をその間口距離で除して得た数値とします。 国税庁質疑応答事例「不整形地の奥行距離の求め方」(関係法令通達・財産評価基本通達20)

同事例の一般図には、地積750平方メートル・竿の幅5メートル・想定整形地の奥行50メートルという旗竿地が図示されています。この例では計算上の奥行距離が750÷5=150メートルとなりますが、想定整形地の奥行50メートルが限度となるため50メートルを採ります。旗竿地では、竿が細いほど「地積÷間口」が発散するため、想定整形地の奥行で頭打ちになるのが通常です。

補正率の連乗には下限がある

間口狭小補正率の適用がある場合においては、この表により求めた不整形地補正率に間口狭小補正率を乗じて得た数値を不整形地補正率とする。ただし、その最小値はこの表に定める不整形地補正率の最小値(0.60)とする。
また、奥行長大補正率の適用がある場合においては、選択により、不整形地補正率を適用せず、間口狭小補正率に奥行長大補正率を乗じて得た数値によって差し支えない。 財産評価基本通達 付表5「不整形地補正率表」の(注)3

0.60という下限は、通達本文ではなく付表5の注書きに置かれています。しかも独立した数値として定められているのではなく、「この表に定める不整形地補正率の最小値」を参照する形です。旗竿地では不整形地補正率がすでに0.60(下限)に達していることが多く、その場合は間口狭小補正率を掛けても下限で止まり、それ以上は下がりません。

6. 借地権は通路に及ぶのか

ここが本題です。B土地には建物が建っていません。借地権は「建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権」(借地借家法2条1号)ですから、建物のない通路に借地権が及ぶのか、という疑問が生じます。

これにも正面からの回答があります。

借地権の及ぶ範囲については、必ずしも建物敷地に限られるものではなく、一律に借地権の及ぶ範囲を定めることは実情に沿いません。借地権の及ぶ範囲は、借地契約の内容、例えば、権利金や地代の算定根拠、土地利用の制限等に基づいて判定することが合理的であると考えられます。
なお、建物の敷地と駐車場用地とが、不特定多数の者の通行の用に供されている道路等により物理的に分離されている場合には、それぞれの土地に存する権利を別個に判定することとなります。 国税庁質疑応答事例「借地権の及ぶ範囲」(関係法令通達・財産評価基本通達27)
前半の意味
「建物所有目的」というのは契約全体の目的を指すのであって、土地の各部分に建物が建っている必要はありません。庭・通路・駐車場も、建物の効用を果たすために一体として借りているなら、借地権の範囲に含まれ得ます。課税庁自身がこれを認めています。
なお書きの向きに注意
なお書きは「道路等により物理的に分離されている場合には別個に判定する」というものです。旗竿地の通路は、建物の敷地を道路から分離する要因ではなく、道路に接続させる要因です。したがってこのなお書きが想定する場面には当たらず、一体判定を支持する方向に働きます。

通路だけの借地でも借地権になり得る(裁判例)

「通路だけを借りているのだから借地権ではないのではないか」という疑問に、正面から答えた裁判例があります。借地権の譲渡許可の申立てに係る借地非訟事件の決定です。

右の事実によれば、本件借地権は専ら通路とする目的をもつものであるが、現状のもとでは前記の建物利用上必要不可欠と認められるので、借地法の適用を受ける非堅固建物の所有を目的とする借地権と解することができる。 東京地方裁判所昭和44年4月14日決定(判例タイムズ235号250頁、昭和44年(借チ)2021号)

この事案では、申立人が自己所有地上の住居のために、隣接地を通路として使用する目的で賃借していました。注目すべきは次の点です。

つまり通路のみを目的として借りている土地であっても、それが建物の利用上必要不可欠と認められる場合には、建物の所有を目的とする借地権と解されるという判断です。通路がなければ建物が公道に出られないという位置関係であれば、この考え方が及ぶ可能性が高いと考えられます。

なお、これは下級審の決定であり、かつ借地権の譲渡許可という別の場面における判断ですので、相続税評価の場面にそのまま射程が及ぶかには留保が必要です。もっとも、財産評価基本通達上の借地権は借地借家法2条の借地権に限られるとされていますから(質疑応答事例「借地権の意義」)、借地法の適用を受ける借地権と解されるかどうかは、財産評価上の借地権該当性の前提問題として意味を持ちます。

判定要素に「地代の算定根拠」が入っている

実務上の急所
この事例は、判定要素として「権利金や地代の算定根拠」を明示的に挙げています。

つまり、地代が建物の敷地の面積分だけで算定されている場合(たとえば契約書に「○○円/坪 × 建物敷地の坪数 × 12ヶ月」とだけ書かれている場合)、その事実は借地権の及ぶ範囲を建物の敷地に限定する方向に働きます

契約書の賃借地積が建物の敷地の面積しか書いていない、地代もその面積分しか算定されていない、しかし現況では通路も使っている。こうした食い違いは、古い借地では珍しくありません。相続税評価の場面では、この食い違いが「借地権はどこまで及ぶか」という問題として表面化します。

もっとも、この事例は「借地契約の内容、例えば、権利金や地代の算定根拠、土地利用の制限等に基づいて判定する」としており、地代の算定根拠は例示として挙げられた考慮要素の一つにすぎません。これだけで結論が決まるわけではなく、総合判断になります。

一体と認める方向に働く事情

7. 賃貸借か使用貸借か

通路について地代を払っていない場合、使用貸借と整理されることになります。この場合、使用権の価額は零です。

建物又は構築物の所有を目的として使用貸借による土地の借受けがあった場合においては、借地権の設定に際し、その設定の対価として通常権利金その他の一時金を支払う取引上の慣行がある地域においても、当該土地の使用貸借に係る使用権の価額は、零として取り扱う。
この場合において、使用貸借とは、民法第593条に規定する契約をいう。したがって、例えば、土地の借受者と所有者との間に当該借受けに係る土地の公租公課に相当する金額以下の金額の授受があるにすぎないものはこれに該当し、当該土地の借受けについて地代の授受がないものであっても権利金その他地代に代わるべき経済的利益の授受のあるものはこれに該当しない「使用貸借に係る土地についての相続税及び贈与税の取扱いについて」(昭和48年11月1日付直資2-189ほか)1
「固定資産税を超えていれば賃貸借」という反対解釈は成り立たない
通達の文言は「公租公課相当額以下の授受があるにすぎないものはこれに該当し」という十分条件の例示です。逆に「公租公課相当額を超えれば当然に賃貸借」とは書かれていません。

実際、支払金員が固定資産税等の年税額を超えていたにもかかわらず借地権が否定された裁決があります。その事案では、金員の支払開始以前は使用貸借であったこと、契約書が作成された事情が見当たらないこと、支払開始の経緯や算定根拠が明らかでないこと、当事者が親子であったことが総合考慮されました。

借地権の存否は、権利金の有無・地代の水準・当事者の関係・契約書の有無・契約の経緯・地代の算定根拠の合理性などを総合的に考慮して判断される、というのが実務の到達点です。

賃貸借を裏付ける事情

8. 権利金なし・低額地代でも借地権は満額評価になる

直感と逆になるところ
「権利金も払っていないし地代も安い。だから借地権は弱く、評価も低いはず」と考えたくなりますが、です。地代が安いことは減額要因になりません。むしろ借地権割合をそのまま適用した満額評価になります。

相当の地代通達(昭和60年6月5日付直資2-58、直評9)は、権利金の支払に代えて相当の地代を支払っている場合の調整を定めたものです。その算式は次の構造です。

自用地としての価額 × { 借地権割合 × ( 1 - (実際に支払っている地代の年額 - 通常の地代の年額)                    ÷ (相当の地代の年額 - 通常の地代の年額) ) }

この算式は通常の地代から相当の地代までの間を、借地権割合から零まで直線的に按分する構造です。

実際の地代中括弧内結果
通常の地代と等しい1 - 0 = 1自用地価額 × 借地権割合(財産評価基本通達27と一致)
相当の地代と等しい1 - 1 = 0零(相当の地代通達3(1)と一致)

つまり通常の地代を下回る領域は、この算式の守備範囲外です。通達自身も次のように述べています。

借地権の設定に際し通常権利金を支払う取引上の慣行のある地域において、通常の地代(その地域において通常の賃貸借契約に基づいて通常支払われる地代をいう。)を支払うことにより借地権の設定があった場合又は通常の地代が授受されている借地権若しくは貸宅地の相続、遺贈又は贈与があった場合には、この通達の取扱いによることなく、相続税法基本通達及び相続税財産評価に関する基本通達等の従来の取扱いによるのであるから留意する。 相当の地代通達の趣旨

通常の地代の水準でこの通達によらないのであれば、通常の地代を下回る場合はなおさら同様と考えるのが自然です。したがって財産評価基本通達27に戻り、自用地価額×借地権割合で評価することになります。

算式に無理やり当てはめるとどうなるか
実際の地代が通常の地代を下回ると、算式の分子が負の値になります。すると中括弧内が1を超え、借地権割合を超える評価額が出てしまいます。権利金を払って通常の地代を払っている借地権よりも、権利金を払わず低い地代しか払っていない借地権のほうが高く評価されるという逆転が生じ、明らかに不合理です。

評価ソフトによっては中括弧内を1で頭打ちにする処理をしていることがあり、その場合、結果の金額は正しいのに、明細書に記載された算式ではその金額が出てこないという状態になります。金額が合っていても、様式の選択自体を見直したほうがよい場面です。

「通常の地代」は本来は実勢地代

実務では「通常の地代=自用地価額×(1-借地権割合)×6パーセント」という簡便法が広く使われています。しかし通達の定義は「その地域において通常の賃貸借契約に基づいて通常支払われる地代」であり、本来は近隣の実勢地代を指す概念です。簡便法はあくまで目安であることは意識しておく必要があります。

なお、相当の地代は自用地価額のおおむね年6パーセントです。法人税の側では当初「年8パーセント」とされ、平成元年3月30日付直法2-2により当分の間「年6パーセント」と読み替えて運用することとされた、という沿革があります。

9. どちらに転ぶと不利か

通路を含めて全体を評価するのと、建物の敷地だけを評価するのとでは、どちらが納税者に有利でしょうか。

通路を含める評価のほうが、通常は保守的(納税者に不利な方向)
通路を借地権の範囲から外すと、建物の敷地は単独では公道に接しないことになり、無道路地(財産評価基本通達20-3)に該当します。すると通路開設費用相当額の控除が加わるため、評価額は面積比以上に下がる方向になります。

つまり全体を評価しておけば、過小評価として否認されるという筋のリスクは低いことになります。むしろ過大評価になっていないかを検討する場面です。

ただし、無道路地の控除額は「その価額の100分の40の範囲内において相当と認める金額」とされており、その金額は「接道義務に基づき最小限度の通路を開設する場合のその通路に相当する部分の価額」です。40パーセントは上限であって、実際の控除額はこれより相当小さくなることが多い点には注意が必要です。

そもそも実益がどれだけあるか

被相続人がその建物に居住していた場合、取得者の要件を満たせば、借地権にも小規模宅地等の特例が適用されます。租税特別措置法69条の4第1項は対象を「宅地等(土地又は土地の上に存する権利をいう)」としているためです。

項目内容
区分特定居住用宅地等
限度面積330平方メートル
減額割合80パーセント

仮設例の250平方メートルは限度面積の範囲内ですから、特例が全部について適用されるのであれば、面積の当否による課税価格への影響は、評価額の差額の20パーセント相当額にとどまります。資料収集にどこまで労力をかけるかを判断する材料になります。

10. 確認すべき資料

  1. 建築確認申請書・確認済証・検査済証の「敷地面積」欄
    最も決定的な資料になり得ます。建築基準法43条の接道義務を満たすには通路を敷地に含めるほかありませんから、敷地面積に通路が含まれていれば、建築時点で通路について使用権原があったことの有力な証拠になります。あわせて敷地求積図で図面上も確認できます。
  2. 通路についての賃貸借契約書の有無、地代の支払いの有無
    賃貸借か使用貸借かは、評価単位と借地権の範囲の双方を左右する分岐点です。
  3. 登記事項証明書
    建物の敷地と通路の所有者が同一人か別人かを確認します。同一人であれば、通路の利用権原が契約に含まれていないという構成は採りにくくなります。
  4. 契約書に添付された図面・実測図・別紙目録、および従前の契約書
    契約書本文の地積と図面上の範囲が食い違う場合、図面が優先されることがあります。
  5. 通路の通行実態の現地確認
    借地人の専用か、隣接地の所有者・利用者も通行しているか、通り抜けができるか。専用でなければ通達24の適用場面に変わります。
  6. 固定資産税課税明細書
    地代が公租公課相当額を超えていることの確認、住宅用地の特例の適用の有無。
  7. 課税時期の路線価図
    借地権割合の確認と、借地権の取引慣行があると認められる地域であることの確認。財産評価基本通達27のただし書は、取引慣行があると認められる地域以外の地域にある借地権の価額は評価しないとしているため、この前提の確認が評価の出発点です。
  8. 地代の領収書、地代の改定履歴、更新料の算定根拠資料
    地代や更新料がどの面積を前提に算定されてきたかを確認します。

11. まとめ

論点結論
評価単位建物の敷地と専用通路を合わせて1画地。地主が別人でも同じ(質疑応答事例「宅地の評価単位-借地権」、平成26年4月22日裁決)。ただし通路が使用貸借なら評価単位から外れる(平成28年12月20日裁決)
私道の減額専用通路は私道に当たらないので通達24による減額はしない。ただし通路を含めることでかげ地割合が上がり、不整形地補正の形で減額が入る
借地権の及ぶ範囲建物の敷地に限られず、通路にも及び得る。判定は「借地契約の内容、例えば権利金や地代の算定根拠、土地利用の制限等」による。地代が建物の敷地分しか算定されていない場合は要注意
権利金なし・低額地代相当の地代通達の算式は適用場面ではなく、財産評価基本通達27で満額評価(自用地価額×借地権割合)。地代が安いことは減額要因にならない
使用貸借リスク公租公課相当額以下なら使用貸借。ただし超えていれば当然に賃貸借という反対解釈は成り立たない。契約書・算定根拠・当事者の関係・更新料の有無を総合判断
実務上の勘所
この類型では、評価単位や補正率の話に入る前に「通路にそもそも借地権が及んでいるのか」を確認するのが順序として正しい進め方です。契約書の賃借地積・地代の算定根拠・建築確認の敷地面積という3つを突き合わせれば、多くの場合は判断がつきます。

本記事について

本記事は、税務上の一般的な考え方を整理した参考資料です。実際の取扱いは個別の事実関係により異なります。掲載した数値・図はすべて説明用の仮設例であり、特定の個別案件のものではありません。

本記事で引用した通達・質疑応答事例・裁決は、いずれも国税庁および国税不服審判所が公表しているものです。文中に掲げた通達・質疑応答事例の文言は原文により確認していますが、記事作成時点のものであり、その後の改正等により取扱いが変更される可能性があります。

本記事の主な根拠は次のとおりです。財産評価基本通達7-2、8、9、20、20-3、20-4、24、27、付表4、付表5、付表6、付表7/「相当の地代を支払っている場合等の借地権等についての相続税及び贈与税の取扱いについて」(昭和60年6月5日付直資2-58、直評9)/「使用貸借に係る土地についての相続税及び贈与税の取扱いについて」(昭和48年11月1日付直資2-189ほか)/国税庁質疑応答事例「借地権の及ぶ範囲」「借地権の意義」「宅地の評価単位-借地権」「私道の用に供されている宅地の評価」「間口距離の求め方」「不整形地の奥行距離の求め方」/国税不服審判所平成26年4月22日裁決(裁決事例集No.95)、平成28年12月20日裁決(裁決事例集No.105)/東京地方裁判所昭和44年4月14日決定(判例タイムズ235号250頁、昭和44年(借チ)2021号)/借地借家法2条、民法593条、601条/建築基準法43条/租税特別措置法69条の4